文章術・小説の書き方

『めんどくさがりなきみのための文章教室』は超初心者向けの小説入門本!

  1. 文章を書くのって難しくて大変そう
  2. 小説を書いてみたいけれど、何から始めればいいのか、ルールや決まりごとも分からない
  3. 小説とか物語ってどうやって作ったらいいの?

こんなことで悩んでいませんか?

はやみねかおるさんの著書『めんどくさがりなきみのための文章教室』は小説を書いてみたいけれど、まだ一歩も踏み出せていない。という人におすすめの一冊です。
上記の三点の悩みを踏まえて、本書のおすすめポイントを紹介していきます。

文章を書くのって難しくて大変そう


この悩みを解決してくれるのが、第一章です。

『めんどくさいと思うことは才能!
めんどくさいと思うから、まとまりのある文章ができあがる。』

はやみね かおる 『めんどくさがりなきみのための文章教室』

めんどくさいと思う感情を肯定し、寄り添う言葉が、やる気を起こさせてくれます。それだけではなく、実際にテーマを決める際の考え方や、書くことの決め方も丁寧にレクチャーしてくれます。

『何を書けばいいかわからないという、答えが出ないような問題を自分に出し、答えが見つからないから書けないと、理由づけしてしまう。
そうすると、本当に書けなくなってしまう。
まずは、単純に考えて、書ける答えを見つけよう。』

はやみね かおる 『めんどくさがりなきみのための文章教室』

本書は、初めからいきなり実践させるのではなく、やり始めることの大切さと教えてくれます。一歩を踏み出せない人にとってはとても心強い言葉がたくさん載っていることも魅力の一つです。

一章では『トレーニング編』として6つのトレーニングも紹介してくれています。
日常生活の中で簡単にできるので習慣化しやすく、取り組むことのハードルを下げてくれているいいトレーニング方法ばかりです。

特に私が好きなトレーニング方法は4つ目のトレーニング方法です。

『アンテナを高くするということは、意識して周りを見ること。
注意深く周りを見れば、書くことはたくさん転がっている。』

はやみね かおる 『めんどくさがりなきみのための文章教室』


このトレーニング方法は、書くことで鍛えるのではなく、日常にあるものを視たり聴いたりすることで書きたいことを見つけられるようになる。というものです。
日々の生活を大きく変えるのではなく、自分のアンテナの高さを変えることで感性を磨ける、面白いトレーニングだと思います。
ちょっとした時間でできるものばかりです。全部を一気にやろうとせず、一つ一つ生活の中に取り入れれば、楽しみながら書く力を身につけられるでしょう。

小説を書いてみたいけれど、何から始めればいいのか、ルールや決まりごとも分からない

これを解決してくれるのは主に二章となります。
文章を書くことに慣れてきたら、次は少し実践的な章に移ります。
大きく分けて、表現力の鍛え方・作文の基本ルールの2つを鍛えることを解説してくれています。
表現力を鍛える、と言われると身構えてしまうか知れませんが、本書では食事の感想や、自分が経験したことの伝え方を解説してくれているので、特別なことをしなくても、難しく考えなくても大丈夫です。

『自分の気持ちを知るだけで、感性は豊かになる。
感性が豊かになると、自然に表現できる。』
この章でも自分と向き合い、感じていることに意識することに重きを置いた解説がされています。

はやみね かおる 『めんどくさがりなきみのための文章教室』

また、二章からは小説では欠かせない「比喩」表現・文章の見た目の整え方・読みやすい文章の作り方・句読点の使い方など、文章の基本ルールも丁寧に教えてくれるので、いよいよ小説執筆への道筋が見えてきて、自分の実力の変化にぐんと楽しさが増す章です。

小説とか物語ってどうやって作ったらいいの?

三章ではこの疑問を解決してくれます。
書きたいことの見つけ方から、主人公やキャラクター設定の方法、物語の構成や公募に至るまでの基本的な知識を教えてくれます。
まずは小説を書くために必要な感情『感動』を見つけるためのコツ・本質的な部分の見つけ方から始まりますが、ここでのレクチャーはとても参考になります。

『たくさんの人と出会い、話を聞く。
自分と違う考えに触れ、考える。
感動する体験を増やせば、その中から、このことを書きたいというものが見つかる。』
そのために何をしたらいいのかは、3章を通して丁寧に説明がなされています。

はやみね かおる 『めんどくさがりなきみのための文章教室』

また、3章で特に面白いと感じたのは、原稿を書き進められなくなった時のトレーニング『音声だけ再生トレーニングからのノベライズ』です。

『ノベライズとは、映画やドラマ、マンガなどを小説にすることである。
ダナイの言う『音声だけ再生トレーニングからのノベライズ』とは、音声だけを聞き、その台詞を使って、小説にしてみるトレーニングである』

はやみね かおる 『めんどくさがりなきみのための文章教室』


二つのトレーニングを合わせて行えば、小説におけるキャラクターの動かし方や表現、行動の裏にある感情の描き方が身につくでしょう。
具体的なやり方もレクチャーしてくれているので、もしも物語を書くことに行き詰まったら、自分の好きな作品でトレーニングを試してみると、いい息抜きをしながら新たな発見にも繋がりそうです。

物語の完成までの過程はあくまで基本的な情報で完結させてくれている本書なので、構成の細かいノウハウや文章技法は多く書かれてはいません。
けれど、シンプルで基本に忠実だからこそめんどくさがりでも物語を完結させられるように手引きしてくれるのが本書です。
基本の先にある、応用や自分らしさを追求するための土台づくりを学べますので、初心者の方は必見の一冊です。

著者 はやみね かおるさんについて

『児童向け推理小説書き』として、ミステリー小説を主に書いていらっしゃるプロの作家さんです。
いくつものシリーズものの小説を出版されていて、特に『名探偵夢水清志郎事件ノート』シリーズは累計360万部突破の大人気小説です。
また『怪盗クイーン』シリーズや『都会のトム&ソーヤ』シリーズは映像化もされており、X(旧Twitter)でトレンド入りするほどの人気作品です。

『この本にはーー
・ぼくが小さい頃からやってきたこと
・小学校教師時代に、子供たちに教えていたこと
・作家になった今も、やってることや心がけていること
などをつめこみました。
スペース的には書きたりないところもありますが、この本を読めば、確実に文章力は上がります。ぼくとダナイが、保証します。』

はやみね かおる 『めんどくさがりなきみのための文章教室』

プロの作家が今でも心がけているトレーニング方法や考え方ならば、スキルアップの信頼性に間違いないでしょう。

終わりに

本書は中高生向けに書かれた本なので、難しい言葉もなく、とても読みやすいです。主人公の中学生の男の子と、不思議なネコが織りなす物語に沿って進んでいき、楽しみながら読めるので、まさにめんどくさがりな人でもサクサク読破できます。
ただし、ある程度小説を書くための知識がある人には物足りないかも知れません。
あくまで小説を書くことに全く手を出していない人向けの書籍だといえます。
ですが、たとえ大人であっても、小説執筆の知識がない方・本を読み慣れていない方にとっては、新たな挑戦の敷居を下げてくれる本です。

それに、大人だからこそ気付かされることもあります。
小説初心者向けの解説本でありながら、自分と向き合い、自分の人生を楽しくする方法を教えてくれる本でもあるからです。
私はこの本を読み終えた時、表面的な文章作法ではなくて、小説を書くための本質的なことに気付かされました。
そして、この本に書かれていることを実践すれば、小説を書くことをもっと楽しめるだろうとワクワクしました。

楽しく小説を書くことに挑戦してみたい方は、ぜひこの本を手に取ってみてください!