文章術・小説の書き方

初心者必見!『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた』

こんな気持ちを抱える方に必見の書籍です!

・文章術を勉強してみたいけれど、どの本を読んだらいいかわからない
・文章・小説を書くうえで最低限の作法を知りたい
・上手く文章が書けるかどうか不安で踏み出せない

この記事では「読むべきポイント」をピックアップしております!

『 「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた』はどんな本?

『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』は、藤吉豊さんと小川真理子さんが執筆し、日経BPにて出版されました。

本書は100冊にも及ぶ文章術の名著をランキング形式で一冊にまとめたものになります。
昭和の文豪から令和のブロガーなど、あらゆる世代や職種の方のノウハウがまとめられています。
小説を書く上での最低限の作法を覚えるために非常に役立つ内容が豊富なので、基本的な手法や心構えを知りたい方にはもってこいの一冊でしょう。
このランキングは、著者の独断でつけられたものではなく、100冊の名著から、似た内容のノウハウを数えてリスト化したものがベースとなっています。
高い位置付けにあるものほど、多くのプロ達が重要だと思っているノウハウなので、信ぴょう性も実用性も非常に高いまとめ本です。

この本の著者

藤吉豊さん
株式会社文道の代表取締役です。
編集プロダクションにて編集・ライティングに従事し、編集プロダクション退社後は出版社にて編集長として活躍。その後独立し、現在の事業を運営されています。

小川真理子さん
株式会社文道の取締役です。
大手編集プロダクションに従事し、その後フリーランスとして企業ウェブサイトのコンテンツ制作に携わり、現在の職歴に至った方です。

お二人とも、かなりの年月を編集やライティングに費やしているだけではなく、実際に業界で活躍されていた(もちろん現在も)プロ中のプロです。小説執筆とは異なるジャンルですが「書くこと」に対して、初心者である私たちよりもはるかに多くの知識や経験をお持ちでしょう。
そんな方々が厳選し、まとめてくれたノウハウが、身にならないはずがありません。

選ばれた40のノウハウ全てが完璧であることに越したことはないですが、自分の気になるものを一つ一つ身につけていけば良いのではないかな、と当方は思います。

すべての人に身につけてほしい7つの基本ルール

文章はシンプルに

100冊中53冊に記されているほど、重要なルールです。

  • なくても意味が通じる言葉を削る
  • 一文の長さの目安は「60文字」以内
  • ワンセンテンス・ワンメッセージ

三つのポイントに分けて解説されています。
それぞれ、名著の記述の紹介や良い例と悪い例つきで具体的に説明されているので、何が正しい形なのかがわかりやすく学べます。
特に『なくても意味が通じる言葉を削る』については、当方も気をつけたいルールの一つです。同じ意味の言葉をつなげてしまっていたり、意味のない「という」や「とても」など、回りくどい言葉を入れてしまったりしがちです。著書にて『削りやすい「6つの言葉」』をリストに上げてくれているので、とても参考になります。

文章は必ず推敲する

推敲とは、より良い文章になるように、練り直すことです。
100冊中27冊に、推敲の必要性が述べられていました。

「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。 藤吉豊、小川真理子

本書では、名著27冊に掲載されていたポイントとチェック項目を抽出して、リスト化してくれてあります。
また推敲の10のチェック項目は、2位以降で紹介されているノウハウに関わる項目もあります。推敲は文章を書くにとって、非常に重要な工程だということでしょう。
ここでは、本書に記載されている推敲の四つのポイントのうち、ハードルが低くて取り組みやすい二つの項目を紹介いたします。

1.時間を置く

こちらは著者によって意見が分かれますが、長い文章ほど時間をおいた方が良いという意見もあるので、小説においては一週間が理想であるように感じました。
自分自身の話になりますが、小説を書き上げた数日は気持ちが上がっていて、自称無敵モードに入ってしまい、なかなか自分の文章を客観的に見られないことが多いです。
時間をおけば置くほど効果があるというのは間違いないでしょう。

2.声に出す(音読)

池上彰さんは、本を出すために書いた原稿を「全部声を出して読み返す」こともあるそうです。
すらすら読めないところ、読みにくいところ、リズムの悪いところには問題が潜んでいます。

「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。 藤吉豊、小川真理子

声に出す作業は、推敲の精度アップには欠かせない方法の一つだと当方も感じています。
これは個人的な紹介ですが、iPhoneユーザーの方なら設定のアクセシビリティで使える読み上げ機能がおすすめです。
漢字の読み方が怪しい部分が多々ありますが(ある程度の読みは手動で修正できます)慣れれば誤字や脱字・文章のリズムや長さをチェックする目的で使うのに役立ちます!
(他にも、いい読み上げアプリや機能をご存知の方は教えてもらえると嬉しいです。……できれば無料のものを……)

比喩・たとえ話を積極的に使う

比喩は、書き手の主張や大切なことを読み手に印象付ける役割を担っています。比喩を使うと、理解しにくい物事がわかりやすくなったり、イメージしやすくなったりします。

「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。 藤吉豊、小川真理子

本書では、使いやすい「直喩」「隠喩」「擬人法」の3つを例文とともに紹介してくれています。
比喩には他にも種類がありますが、初心者ならこの三つをまずは使いこなせるところから始めても大きな成長を見込めるのではないでしょうか。
さらに「直喩」と「隠喩」が与える印象の違いも説明されているので、それぞれの使いどきの目安もこちらの紹介で知ることができます。
「まるで〜のようだ」という表現は誰しもが使う比喩表現ですが、そもそも比喩表現にはどんな効果があるのか・それぞれの比喩にどんな特徴があるのか・まずはどの比喩を使うのがいいのか、なども説明されているので、ぜひ読んで頂きたい項目です。

ワンランク上の文章を書くための13のポイント

思いつきはメモに、思考はノートにどんどん書く

なぜ、「メモを取ること」「ノートにまとめること」がそれほど大切なのでしょうか。
文章を書く作業は、大別すると次の2つのプロセスです。
・ネタ、情報を集める
・書く

「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。 藤吉豊、小川真理子

当方もネタを忘れないようにするため・情報収集のためのメモを取ることは多いです。
ですが、個人的に「そういう効果もあるのか!」と目から鱗だったのは「メモを取る」=「書く」ことのトレーニングだと捉える意見があったことです。

「自分の思考を紙の上に定着させることのできないものが、他人にわからせる文章を書けるはずがない」

知的トレーニングの技術 〔完全独習版〕 花村太郎

小説を書く私達にとって、ネタは言語化されたものよりもイメージや映像であることもしばしばあるでしょう。
なので当方は個人的に引用の言葉がかなり刺さりました。上手く言語化できずに妄想で留めてしまうことがある当方には、かなり痛いくらいです。
言葉ではない思いつきを言語化するというトレーニングとしても、どんどんネタを書くことは重要だと再認識させられました。

この項目では、他にも「アイデア出し・要素出しのため」「情報整理のため」のメモ・ノート術も紹介されています。
いっぱいメモやノートに思いついたことをまとめたけれど、それをどう使えばいいんだろう?という疑問にも答えてくれています。是非怖がらずにどんどんメモを増やしていきましょう!

名文を繰り返し読む

名文を読む3つのメリット
(1)語彙を増やせる。
(2)言葉づかいを学べる。
(3)文生のリズムを身につけられる。

「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。 藤吉豊、小川真理子

われわれはまつたく新しい言葉を創造することはできないのである。可能なのはただ在来の言葉を組み合わせて新しい文章を書くことで、すなはち、言葉づかひを歴史から継承することは文章を書くといふ行為の宿命なのだ

文章読本 丸谷才一

「継承」という言葉に当方は大いに胸がときめき、熱くなりました。
文章を書くことも、武術や武芸のように「継承」できるものなんだな……と。

『名文を繰り返し読む』というポイントは、他にもこの書籍で紹介されている『語彙力をつけろ、辞書を引け』『名文を書き写す・真似る』『一番好きな文章』というポイントや秘訣に繋がる取り組みのひとつです。これらをセットにすると更に効果は抜群なのではないかと思います。
一気に四つの文章力アップのノウハウに取り組める、素晴らしいトレーニングだと当方は思います!

小説家を目指す
カンガルーさん

でも、特に好きな本がないんだよね……
どんな本を選べばいいのかもわからないや

そんなお悩みを持つ人もご安心ください。
本書では文章のプロがお手本とした本の紹介もされています!

ここでは著者名だけお出ししますが、例えば森鴎外さんや、司馬遼太郎さん、夏目漱石さんなど……。
中にはかなり難しい本もあるかもしれませんが、名文を読むメリットの一つである「語彙力アップ」との相性は最高です。是非トレーニングだと思って挑戦してみて下さい!

作家の村上春樹さんは、『若い読者のための短編小説案内』の中で、アメリカの大学で日本文学を教えていたときのことを書いています。(中略)
・何度も何度もテキストを読むこと。
・そのテキストを好きになろうと努力すること。
・読みながら疑問点をリストアップしていくこと。
(中略)
この3つは、「真剣に本に読み込むにあたって、僕自身が常日頃心がけているポイントでもある」とも述べています。

若い読者のための短編小説案内 村上春樹

いくつもの素晴らしい作品を生み出している、超有名作家さんでも、本の読み込みは常に行なっていると言われれば、初心者である私たちがやらない理由はないですよね!

とにかく書く、たくさん書く

とにかく書いた方がいい2つの理由
・文章が上達するから
・書く内容が固まるから

「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。 藤吉豊、小川真理子

本書では書く機会を増やすための、7つの方法がまとめられています。
中でもとくにおすすめなのは「日記」のようです。
ここで推奨されているのは、毎日「書く」ということを継続することです。文章力も筋肉と同じようで日々使っていかないとどんどん衰えてしまうようです。
そのため、書くことへのモチベーションを下げないよう、書いた文章を自分で褒めることも推奨されています。

「わかりにくい」と思ったら修飾語を見直す

こちらのノウハウは、当方がやりがちだな……と思ったのでチョイスしました。
当方は一つの文章に沢山飾りをつけたくなってしまう。または、修飾語と被修飾語(修飾される語)が離れていてわかりづらい文章になる。ということがしばしばあります。
推敲の時に、あわせて修飾語のチェックをセットにするのも、より伝わりやすい文章に仕上がるポイントだと思います。

  • 修飾する語と修飾される語は近くに置く
  • 短い修飾語はとにかく近くに、長い修飾語はやや離れてもOK
  • 修飾語が多いときは文章を分ける

大きくこの3つのポイントを例文付きで解説してくれています。特に、悪い例ではなぜわかりづらくなっているのかを丁寧に解説してくれているので「修飾語……? 難しそう……」と気構えなくても、十分理解できる内容となっています。

気をつけるとさらに文章がよくなる20の秘訣

とりあえず、書き始める

ここではなんにも難しいことは言っていません。言葉の通り、ただ「書く」だけでいいと肯定してくれています。
各ベストセラー著者の方々の言葉が引用されていますが、そのどれもが「書けばなんとかなる」と背中を押してくれています。

「一行でもいい。『とにかく書く』ことです。『きょうも雨』でもいい。『久しぶりに牛丼を食べた』でもいい」

文章のみがき方 辰濃和男

この他にも心強い著者の一言がいくつも紹介されています。
何事もまずは最初に一歩踏み出すのが一番大切で、一番結果につながると言うことを教えてくれている心構えです。

『とにかく書く、たくさん書く』というポイントに通じるものがある秘訣ですね。
物書きあるあるだと思いますが、最初の一行が一番エネルギーを使うし、勇気がいるなぁと常々思います。
まっさらなページを見て、ゼロからのスタートを目の当たりにしてげんなり。でも渋々でも一行書きはじめると、どんどん続きに手がつけられる……そんな現象に心当たりはありませんか?

日頃から内面を豊かに耕す日頃から内面を豊かに耕す

このノウハウ(心構え)は、なるほど……と納得すると同時に、個人的に一番ワクワクしました。

「文章がうまくなるには、6割の『人生観』と、『4割』の『情報』と『テクニック』が必要である」

悪文・乱文から卒業する 正しい日本語の書き方 スクール東京

この項目では、テクニックや情報以上に「書き手の人生観」が読み手に感動を与えるのだと解説されています。
つまり、文章作法などの知識やテクニックだけではなく、自分自身の成長が文章力の成長につながるということです。
自分磨きをしながら、自ずと文章も深みが出てくるようになるなんて、一粒で二度美味しいな……なんて思ったのは当方だけでしょうか。

過去形と現在形を交ぜると文章がいきいきする

文章を書くとき、文末に悩むことはありませんか?
当方はひとまず同じ文末にならないよう、適当に過去形と現在形(「〜した」「〜する」)を交互に使っていたのですが、このノウハウを見て、改めて書き方に気をつけようと思い直しました。

「私はまた途中で文章を読みかえして、過去形の多いところをいくつか現在形になおすことがあります。これは日本語の特権で、現在形のテンスを過去形の連続の間にいきなりはめることで、文章のリズムが自由に変えられるのであります」

文章読本 三島由紀夫

※テンスとは、時制……動詞の表す動作・作用の時間関係を表す文法範疇 。

物事が目の前で起きているかのような「ライブ感」を出すために、過去形と現在形を交ぜることは有効です。強調したい部分を現在形にすると、その一文が目の前で起こっているかのように感じられるようです。
このノウハウは使い方を覚えるのに少し苦労しそうですが、前項で紹介した名文を読みながら、お手本の著者はどんなふうにこの手法を使っているのか、勉強してみたいと思いました。

著者の言葉

本書では、著者であるお二人の意見はほとんど書かれておりません。ですが、おわりに書かれている著者の意見も、文章を書く上で大切な心構えだと感じたので、紹介いたします。
是非、本書を手に取られた際は、お二人のアドバイスも見ていただきたいです。

藤吉豊さんの「おわりに」

僕が文章を書くときにもっとも大切にしていること、それは
「愛語の実践」
です。
愛語とは、禅語(禅の言葉)のひとつで、
「心のこもったやさしい言葉」
「親しみのある言葉」
「愛情のこもった言葉」
のことです。

「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。 藤吉豊、小川真理子

藤吉さん書く「おわりに」には、書くという行為に対する熱意を感じると同時に、励まされる言葉が記されています。当方はこの書籍によって「愛語」という言葉を初めて知りましたが、言葉の深さと藤吉さんの信念に感動いたしました。
当方も、小説を書くうえでどんな信念を掲げるのか、非常に考えさせられます……。

小川真理子さんの「おわりに」

小川真理子さんは、本書が紹介するテクニックや心構えなどの中で「特に効果のある、文章上達の方法は何か」と聞かれれば
「とにかく書く、たくさん書く」
を推奨するそうです。

小川さんが強く進める理由は、ご本人の経験があるからこそでしょう。
また、小川さんは人を守る言葉として「愛語」の精神を掲げていらっしゃいます。

最後に

40位という沢山のノウハウが集められている本書ですが、人によっては「こんなに覚えることが沢山あるのか……」と不安になってしまうかもしれません。
ですが、それぞれ繋がっている項目もいくつかあり、その中には具体的なテクニックだけではなく、心構えも含まれています。

無理に一気に全てをやろうとはせず、一つ一つできるようになることを増やせばいいと当方は考えます。
何より、この本を読めば、自分がまずは何をしなければならないのかが、はっきりと見えてくるでしょう。

小説を書き始めて間もない方、これから文章術の知識を身につけたいと思っている方は、是非この著書を手に取ってみてください!